【オーストリア】宮殿の日本庭園
2015年9月 7日
シェーンブルン宮殿にある動物園の入り口のちょうど真ん前に、ずいぶん見慣れた風景が広がっていました。日本庭園です。
よくある日本との友好を記念してつくったものだろうとなにげなく見ていましたが、この日本庭園、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナントが1892(明治25)年、世界一周の旅行にでかけた際、日本に立ち寄ったことに由来するものでした。
造園されたのは1913年にさかのぼり、宮廷庭師がイギリスで見た日本庭園を参考にしました。しかし、皇太子の暗殺ではじまった第一次世界大戦が終わると帝国が崩壊し、手入れが行き届かなくなります。もともと日本庭園であったのも忘れられます。
いつしか「アルプス庭園」と呼ばれるようになったのですが、1996年、この庭園を見た日本人が日本庭園にちがいないと気づきます。それを機に復元されたのがこの庭園でした。なにげない異風景に思わぬ歴史が秘められていて、世界はほんとうにおもしろいですね。
- 増田 幸弘
1963年東京生まれ
スロヴァキアの都・ブラチスラヴァ在住のフリー記者。
ヨーロッパ各地を取材しながら、日本でも取材。新聞・雑誌に特集記事や連載記事を執筆している。
「プラハのシュタイナー学校」(白水社)や「プラハ カフカの生きた街」(パルコ出版)などの著作がある。
投稿についての注意事項
- このブログへのご質問については、内容によってお答えできない場合や、回答に時間がかかる場合があることをご了承ください。