ハルツの魔女伝説(2)
2014年11月20日
ヘクセンタンツプラッツ(魔女の踊り場)はターレのボーデ渓谷(ヴェアニゲローデから電車で約1時間)を見下ろす標高454mの台地で、その名の由来となった魔女伝説が今も残っている。
☆ボーデ渓谷(ヘクセンタンツプラッツから)
ターレの森には乙女を踊りに誘って仲間にしてしまう恐ろしい魔女ヴァーテリンデが棲みついていると言われていた。
☆魔女の踊り(ヘクセンタンツプラッツへ行くゴンドラ駅の構内)
☆魔女ヴァーテリンデ(ヘクセンタンツプラッツ)
あるとき、この村に住む乙女が薬草を摘みに森の奥へと入って行った。ハルツがキリスト教を受け入れて間もない頃だったので、乙女はまだ昔の習慣で薬草を摘むときに唱える異教の呪文を口にしながら薬草を摘み始めた。
すると魔女が姿を現し、襲いかかってきた。乙女が十字を切って、「神よ、助けて」と叫ぶと、雷鳴がとどろき、魔女は空中に吹き飛ばされてボーデ川の岩に当って死んでしまった。「神」という言葉は魔女にとって禁句なのだ。
☆穏やかな流れのボーデ川。大きな石が積もっているのはもっと奥のほう
その後、村人は長いことヘクセンタンツプラッツに足を踏み入れることはなかったという。しかし、今では多くの人が訪れるハルツ観光の名所になっている。
☆ターレに向かう平野にそびえる巨岩群「悪魔の壁」の頂上より
☆「魔女の踊り場」へは山道を歩いても行けるが、ゴンドラが人気
((3)に続く)
- 西村佑子(にしむら・ゆうこ)
うお座。早稲田大学大学院修士課程修了。
青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、
薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた。
主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道 を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、
『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(いずれも山と溪谷社)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)など。