ハルツの魔女伝説(3)
2014年11月30日
ヴェアニゲローデの隣町にイルゼンブルクという小さな町がある。町を流れるイルゼ川沿いに山道を登ると、巨大な花崗岩の塊で出来たイルゼシュタインという岩山に着く。その頂上(標高474m)には対ナポレオン戦争の戦没者を慰霊する鉄の十字架が立っている。詩人ハイネはこの岩山に立って目がくらみそうになったと書いているが、決しておおげさではない。
☆イルゼンブルクのマルクト広場。中央の木はマイバウム(5月柱)
☆マルクト広場に隣接する鱒の養魚池とレストラン
☆イルゼシュタイン
昔、この岩山の城にイルゼという美しい姫が住んでいたという。その近くに醜い娘を持った魔女がいて、姫をねたみ、岩城の扉を姫にしか見えないようにしてしまった。イルゼを救うことができるのは美と徳で彼女にひけをとらない若者だけだという。果たして若者は現われたのか。魔女はどうなったのか。何も語られていない。まるで童話の前身みたいで、いろいろ想像できて面白い。
☆ハイネがハルツで一番美しい川だとほめたたえているイルゼ川
☆ハルツを旅したハイネが歩いたコース(イルゼシュタインへの登り口)
作曲者フンパーディンクがオペラ「ヘンゼルとグレーテル」の魔女の家をこの森の中に設定しているが、岩の多い山道を登っていると、それも納得できる。
☆岩だらけの森
☆イルゼシュタインの森にこんなお菓子の家はあったかな?(ホーゼマン画)
次回をお楽しみに。
- 西村佑子(にしむら・ゆうこ)
うお座。早稲田大学大学院修士課程修了。
青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、
薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた。
主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道 を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、
『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(いずれも山と溪谷社)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)など。