魔女の塔(1)
2014年12月 8日
中世ヨーロッパの町は市の外壁に囲まれていて、その壁には見張りや防御のための塔がついていた。後にこの塔は監獄代わりに使われるようになるが、魔女狩りの激しかった時代には、魔女の嫌疑を受けた人々がこれらの塔内に監禁され、拷問や尋問を受けた。
☆フリッツラー(ヘッセン州)にはこのような塔が23あったが、今は9つだけ
☆フリッツラーの魔女の塔。内部には拷問道具が展示されている
☆メミンゲン(バイエルン州)にある魔女の塔
それで、このような塔が「魔女の塔」と呼ばれ、ドイツには現在もたくさん残っている。ただ、19世紀になると、魔女裁判とは関係なしに、塔なら安易に「魔女の塔」と名づけるのが流行ったというから、偽物もけっこうあるようだ。
☆魔女狩りの激しかった町フルダ(ヘッセン州)にある魔女の塔
☆メルヘン街道の町のシュタイナウにある魔女の塔
☆イトシュタイン(ヘッセン州)の城壁にある「魔女の塔」
また、塔を利用するだけでなく、わざわざ魔女を収監するための建物を作った町もある。たとえば、ユネスコ世界遺産に登録されている古都バンベルク(バイエルン州)には、「魔女の家」の見取り図やそこに監禁された被疑者の姿を描いた図版が残っている。
☆魔女の家の見取り図。実際の建物は今は残っていない
☆魔術を使った咎で捕えられた農婦。毅然とした姿が印象的
実際に塔の内部や牢獄を見せてくれるところがある。次回はそれらを訪ねてみよう。
((2)に続く)
- 西村佑子(にしむら・ゆうこ)
うお座。早稲田大学大学院修士課程修了。
青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、
薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた。
主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道 を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、
『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(いずれも山と溪谷社)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)など。