魔女の噴水(3)
2015年2月23日
オーデンタール(ケルンの北東ノルトライン・ヴェストファーレン州)は17世紀に多くの女たちを魔女として迫害し、処刑してきた暗い歴史を持っている。市庁舎の裏手にコンコンと水の湧き出る魔女の噴水がある。銅製の水盤の縁には異端審問、拷問、薬草で治療する女たちなどの姿が浮き彫りになって見える。
☆オーデンタールの魔女の噴水(1988年)
☆はっきりとは見えないが、水盤の縁に描かれた拷問の場面
☆同じく薬草で薬を調合している女の姿
ドイツで魔女裁判を受けた最後の女性はアルゴイ地方(バイエルン州)に住んでいたアンナ・マリーア・シュヴェーゲリン(1729-1781)だと言われている。彼女はアルゴイの中心都市ケンプテンの宮殿内で死刑の判決を受けたが、刑の執行は行われず6年後獄死した。宮殿のそばには彼女を追憶する噴水がある。
☆ケンプテン宮殿
☆アンナ・マリーア・シュヴェーゲリンの噴水(2002年)
魔女というレッテルを貼って多くの人々の命を奪った過去を何らかの形で今に伝え残している町があるのは少しだけ救いかもしれない。
次回をお楽しみに。
- 西村佑子(にしむら・ゆうこ)
うお座。早稲田大学大学院修士課程修了。
青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、
薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた。
主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道 を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、
『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(いずれも山と溪谷社)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)など。