ドイツ魔女街道の旅「魔女市長の家」
2015年6月 4日
レムゴ(ノルトライン・ヴェストファーレン州)は魔女迫害の激しかった町で、16世紀中頃から17世紀後半までに200人以上の人々が魔女として処刑されている。1667年にこの町の市長になったヘルマン・コートマンは16年間の在職中、ひたすら魔女狩りに奔走したので、魔女市長と呼ばれた。
☆レムゴの町
魔女市長が住んでいた家は装飾豊かな階段式のファザードのある実に豪華なものである。この家は今も昔も「魔女市長の家」と呼ばれている。今は郷土博物館になっていて、その地下室に魔女狩り時代の資料や拷問道具などが展示されている。
☆魔女市長の家
☆1630年の拷問者のリスト。「拷問による死」、「拷問の未自殺」、「自殺」、などの文字が見える。全員が女性名(博物館展示)
レムゴは、『日本誌』の著者ケンペル(1651~1716)の故郷である。彼はオランダの日本商館付き医師として長崎にやってきて2年間暮らしている。その彼の叔父も魔女裁判にかけられて処刑された。また、この町のシンボルであるニコライ教会の牧師だったコッホも、1666年、魔女として処刑されている。その罪は魔女の踊りに参加したということだった。
☆ケンペルの想像図。誰の作か不明だが、背景に富士山らしい山が見えるので、日本滞在以後の絵だろう
☆ニコライ教会。2つの塔の形が違っているので「似てない兄弟」と言われている。魔女市長と犠牲者コッホの暗喩にも思えて面白い
次回をお楽しみに。
- 西村佑子(にしむら・ゆうこ)
うお座。早稲田大学大学院修士課程修了。
青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、
薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた。
主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道 を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、
『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(いずれも山と溪谷社)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)など。