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コラム カメラマンが行く!プロゴルフトーナメント

珍妙なラウンド

珍妙なラウンド

4H目は45ヤード地点に。もうほとんどナイター気分。

4H目は45ヤード地点に。もうほとんどナイター気分。

 先回の濃霧も含め、ゴルフほど天候の影響を受けるスポーツも少ないだろう。ま、自然相手のスポーツなのだから仕方がないが…。
 9月、男子ツアーで珍妙なラウンドが2試合あった。1つはトーシントーナメント最終日、もう1つはコカ・コーラ東海クラシック最終日だ。
 トーシントーナメント最終日、早朝から曇り空だが予定通り順調にスタートして行ったが10時半頃雷雲が接近し中断、2時間程で再開されたがこの時点ですでに12時45分、最終組のスタートは13時28分だった。1ラウンド4時間半を考えると時間的にぎりぎりのスタートだ。プレーオフがなければ無事終了だったが、池田勇太が追いつき中国の呉阿順とのプレーオフに…サドンデスの規定どおり18番の繰り返しだが、この時点で時刻は17時45分。まだ初秋とはいえこの時期、この時刻かなり暗い…1ホール目は何とか無事終了、しかし決着はつかず…。2ホール突入、しかしかなり暗い!!苦肉の策で2ホール目はグリーンエッジから145ヤード地点のフェアウェイ上にティーマークを置きそこからティーショット。「何か?おかしなコトになってきたぞ…」とギャラリーもワクワクしながら見守るが、しかしこれも決着つかず…3ホール目は100ヤードまで近づき、そこからティーショット、グリーン周辺ではカートが集合、ヘッドライトと投光器でグリーンを照らす。時刻は18時15分、これまた決着つかず…この時点で空は真っ暗。4ホール目今度は45ヤード地点からアプローチ戦。時刻は18時23分、8メートルの池田に対し、呉は2メートルにつける。グリーン周辺では、カートが右往左往、先の池田は「もうちょっと左、いや右、見えないよぉ」…カートの暗いヘッドライトでは上手くグリーンを照らせない。照明の微調整をしながらのパッティング…慎重を期したものの外してしまう。その後、呉が2メートルを沈め勝敗が決まった。

優勝の呉阿順、中国人初の日本ツアー優勝。女子のフォンシャンシャンに続き男子でも怖い存在が出てきた。

優勝の呉阿順、中国人初の日本ツアー優勝。女子のフォンシャンシャンに続き男子でも怖い存在が出てきた。

 表彰式は18時40分頃開始、いつもの様にグリーン上で真っ暗の中行われた。カメラマン的に言えば「下にモノを置いたら何処にあるか判らなくなる」くらいの暗さ、小さなストロボの方は「光が届かん!」しかしながら多くのギャラリーの方々が真っ暗の中、最後まで付き合ってくれた。200~300人くらいいたんじゃないかなぁ…ギャラリーの皆様ありがとうございました。
 普通この様な場合2人同時優勝となる場合が多いが、何としても決着をつけたかったのだろう。ちなみにティーを移動するというのはツアーでは初めてでルールにも無いということ。色々批判はあるが前代未聞の出来事にある意味盛り上がったのではないか?と思うが…如何?

 一方トーシントーナメントから翌々週のコカ・コーラ東海クラシック、台風17号が直撃か?と思われた最終日。早く終わらせるため最終日としては異例の7時スタート。6時前ギャラリー駐車場になっている名商大前を通過するとすでに満車の看板が…「おっこんなに早く満車か?」と思いながら会場入りプレスルームに行ってみると…「台風接近による安全確保のため無観客試合」の告知が!!ギャラリーゲート前では行列に係員が丁寧に説明していた。何の混乱も無くギャラリーは静かに引き上げたが試合は行われるため払い戻しは無し。

スタートの石川遼、スタンドには誰もいない。

スタートの石川遼、スタンドには誰もいない。

 石川遼は1番ホール7時50分スタート、この時点では雨風も無く穏やかなゴルフ日和。しかしスタンドにギャラリーの姿は無く誰もいない。
まるでQTの試合みたいだが、スタンドや看板、キャディーポンチョなどがあるため違和感が倍増する。 もちろん18番グリーンのスタンドにも1人もいない。周りには関係者がチラホラいるだけ。
選手も異様な環境のためかバーディーをとってもアクションがない、ただ、淡々と競技が行われているだけだ。そんな状況の中、片山晋吾が8バーディー2ボギーとトップのH・Wリューを猛追、同組の近藤共弘や額賀辰徳と3人で盛り上がっていた。しかし片山が17番でボギー、トップのリューと3打差開き、このままリューの優勝確実かと思われた。だが三好はそう甘くは無い、誰もが恐れる“魔の16番”で左崖下に…トリプルボギーで片山晋吾と並んでしまうが、「優勝よりシードを意識した」というように、その後17番、18番を動揺することなくパーで切り抜けプレーオフに持ち込んだ。
プレーオフは1ホール目で決着。片山は1打目を木の根元に打ち込みボギー、対しリューは余裕のパーパットで初優勝。ギャラリーのいない静かな18番グリーン、控えめで小さなガッツポーズ。31歳だが正確無比なショットに胆力、今後怖い存在になりそうだ。

優勝のH・Wリュー(リュー・ヒュヌ)表彰式はハウス内で行われた。

優勝のH・Wリュー(リュー・ヒュヌ)表彰式はハウス内で行われた。

 無観客試合は女子では過去に一度、男子ではツアー機構発足の1999年以降では初めてという。
結局、風雨が強まったのは3時過ぎで、ギャラリーを入れても何とか無事終了できたのでは?と思われたが、今年はイベントの落雷で死亡者が出るなど、色々事故が多かったためか?早めの安全策をとったのだろう。
 また、ゴルフ場は球場と違い多くのギャラリーを収容する避難場所が無い。トーシントーナメントの涼仙GCのようにハウスをギャラリーに開放すればよいが、三好のクラブハウスは狭く収容能力がない。我々メディアもプレスルームを除き立ち入りが規制されるなど、名門としてハウス側のメンバーに対する配慮もあるだろう。ハウスを開放した涼仙GCの決断には感謝したいものだ。今回の台風、雷雨も含め近年多いゲリラ豪雨などのことも考えると、規則、運営なども考えなければならない時なのかもしれない。
今後“ナイター”も無観客もあまり体験することはないと思うが。1ヶ月の内に2度も貴重な体験をした9月だった。

2012年10月19日

コラムフォト

取材担当プロフィール

山之内 博章 やまのうち はくしょう (はっちゃんと呼ばれています。)
1967年2月24日名古屋市生まれO型の魚座です
ゴルフフォトグラファーをやってますが、他に人物や商品も撮ります。
特技?なんだろ?カラオケは大好き。