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コラム 花紀行

鶴舞公園の花菖蒲

鶴舞公園の花菖蒲

6月に入り、雨が似合う花たちの季節。
約90種2万株の花菖蒲が楽しめるという
名古屋市昭和区の鶴舞公園(つるまこうえん)へ行って来ました。
※ 駅名・町名の読みは「つるまい」ですが、公園名は「つるま」です。

鶴舞公園は、JR中央線「鶴舞駅」のすぐ東にあり、
前回の荒子川公園と同じく、駅を出たらすぐ公園です。

駅を出てすぐにある正面広場には「鶴舞公園」の文字。
これは、明治42年の開園当時に内閣総理大臣だった桂太郎氏の筆跡だそう。
達筆ですね。

今回はここを右に曲がって公園案内センターでガイドマップをいただき、
木立に囲まれた道をぐるーっと南西方向に歩いていきました。

図書館、陸上競技場を右に見ながら通り過ぎると、
左手に緑化センターが見えてきます。

ここで名古屋花菖蒲会による「ハナショウブ展」を実施中でしたので、
立ち寄りました(ハナショウブ展は6月16日の日曜まで)。
会員による展示のほか、切り花や鉢植えの販売もしているそうですが、
特に切り花の人気は高く、朝のうちに売り切れてしまうとか。

江戸時代後期から盛んに育種が行われるようになった花菖蒲。
展示や資料、スタッフの方のお話によると、
江戸系、肥後(熊本)系、伊勢系という3つの系統があるそうです。

【江戸系の特徴】
花びらの色や形がバラエティー豊かで、比較的背の高いものが多い。

【肥後系の特徴】
藩主の奨励によって門外不出で栽培や改良が進められたため、
花びらが大きく、六英咲き(外の大きな花びらが6枚)のものが多い。

【伊勢系の特徴】
三英咲きが基本で、花びらは薄く派手で、ちりめん状のものが多い。

ほかにも、山形県長井市に受け継がれている長井古種や外国種などがあり、
それらを合わせると2000品種以上はあるというからびっくりです。

緑化センターを後にして、陸上競技場と子どもの広場の間の道を南下。
公園出口の手前で左に曲がると、
菖蒲池へまっすぐ延びる「あじさいの散歩道」。

街なかでふと見かけるアジサイの花もかわいいけれど、
道の両側から一斉に顔をのぞかせて出迎えてくれるこの雰囲気も素敵。

青や白、ピンクに紫…
ポンポン咲きやガクアジサイ含め、3500株あるそうです。
いろいろな表情のアジサイたちに笑顔を返しながらしばらく歩くと、
あっという間に菖蒲池。

今が盛りと咲き誇っていました。
八つ橋とあずまやのある北側の池にはたくさんの品種が入り乱れていて、
どれが何という品種やらわかりません。

↑平咲きの六英花。
外側の大きな花びらが6枚あり、それが垂れずに水平に咲いています。
すみずみまでぴんと神経が行き届いているような凛々しさを感じます。

↑垂れ咲きの三英花。
外側の大きな3枚の花びらを垂らして咲いています。
花びらが着物の袖のようで優雅ですね。

↑八重咲き。
花菖蒲にも八重咲きってあるんですね。
重い花を支えるのが大変なのか、背丈は低かったです。

南側の池には、品種名を記した札が地面に刺さっていて、
品種がわかりやすかったです。

↑長生殿(ちょうせいでん)。
江戸時代後期に作り出された平咲きの六英花。
江戸系の中でも、「江戸古花」に分類される伝統の品種です。
白地に紅の覆輪(ふくりん=縁取り)があでやか。

↑業平(なりひら)。
由来はよくわかりませんが、恐らく在原業平(ありわらの・なりひら)から
付けられた名前ではないかと思います。背も高く、大輪です。
肥後系、垂れ咲きの六英花。

↑乙若丸(おとわかまる)。
江戸系の三英花。
花びらの折れ方が、肩に力の入った若武者を思わせます。
平咲きかなあと思ったら、受け咲きになっている資料もありました。
ところで乙若丸といえば、源頼朝と義経の兄弟、義円(ぎえん)の幼名。
何か関係あるのかしら。

↑相生錦(あいおいにしき)。
江戸系、垂れ咲き、二色の三英花。

↑紬娘(つむぎむすめ)。
長井古種。
かつて米山藩主・上杉鷹山の奨励によって紬の生産が盛んだったことから
付いた名前かな。花びらに刻まれた編み目が、紬の織り目を思わせます。

↑金星(きんぼし)。
キショウブとの種間交配種。
「愛知の輝き」とともに、よく普及している黄花菖蒲の一種。

↑ピンクフロスト。
アメリカ産、平咲きの六英花。

ほかにも、
「熱砂の嵐」、「赤とんぼ」、「青岳城」、「水玉星」、「日本海」、「天晴」、「千年の友」など、
面白い名前の品種がたくさんありました。
品種名と照らし合わせて、角度を変えながら眺めていると、
あっという間に時間が過ぎてしまいます。

帰りはバラ園を通りました。

↑カトリーヌ・ドヌーブ。
今年は5月後半から一気に開花したと聞いていたので、
そろそろ終わりかなと思っていましたが、
思いがけずサービスで豪華なデザートをいただいた気分。

ほかにも、「ダブル・ディライト」や「クリスチャン・ディオール」、
「パパメイヤン」、「レディ・ブルー」など、まだまだきれいでした。

取材日:2013年6月7日

DATA

鶴舞公園

名古屋市昭和区鶴舞1-1-168
TEL: 052-733-8340(鶴舞公園管理事務所)

交通アクセス

○公共交通機関
JR中央線または地下鉄鶴舞線「鶴舞駅」下車すぐ。
○車
名古屋高速・吹上西・東ICから南西へ約5分。
※有料駐車場あり。

取材担当プロフィール

まころーど
名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。