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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

修験道の隠れ湯 洞川温泉

修験道の隠れ湯 洞川温泉

 ちょっと前になるが、夏の終わりに女4人で温泉旅行に行った。関西に住んではや5年というのに、関西圏の温泉地とその歴史、クオリティは未知数である。同僚の子に紹介されて行ったそこは、奈良県にある奥吉野、標高800mの山の上にある温泉街・洞川(どろがわ)温泉だ。

 人口約1500人の天川村は、「近畿圏の最高峰や水を生む神様が鎮座し、民衆を救う仏様の棲まう場所」として知られ、修験道発祥の地でもある。古より聖なる山々を霊場として崇められてきたという。

 大阪からレンタカーをし、2時間のドライブの道中、国道169号沿いの瓦そば屋「味のかけ橋」に立ち寄る。山口県の名物瓦そばがなぜ奈良の山奥に?よくわからないが、ぞくぞく車が入っていくし、美味しそうだからとにかく入ってみたら、当たりだった。店頭で作り立てのねり天とともに、見た目も豪快なあつあつの瓦にのった茶そばをランチで食す。食べている間も続々のお客さんが入ってくる。巷じゃ有名な瓦そばのようだ。ランチ後、すぐそばの「中将堂本舗」で名物よもぎ餅をデザートで頂く。ここもたまたま見つけて入ったのだが、地元で大人気のお店のようで、続々とお客さんが入っては箱入りのよもぎ餅をたくさん買っていく。

 大満足な寄り道をして、さらに1時間ほど山道をドライブし、やっと天川村に到着。宿チェックイン前にここの魅力の一つ、大自然を味わうべく「みたらい渓谷」を散策。信じられないくらいに澄んだ空気、下界じゃ拝めないエメラルドグリーンの清流、ずっと聞いていられる滝のBGMをしばし楽しむ。

 そして、今回宿泊するお宿「花屋徳兵衛」にチェックイン。こじんまりとした温泉宿が十数件ほど立ち並ぶ洞川温泉の中でも、一番最高級のお部屋に泊まらせて頂いた。狭いメインストリート沿いに小さな温泉宿が佇むのだが、どのお宿にも縁側があり、観光客が縁側に座ってお茶を飲んだりして休憩している。もともと修験道発祥の地、行者が今でも修行などの合間に休憩できるようにと、縁側が作られているのだ。他のどの温泉地にもない、洞川温泉の歴史と伝統、文化をこういった宿の造りから垣間みることができた。

 夕食前に早速宿の温泉へ。こじんまりとしてはいるが、綺麗に改装された大浴場は半露天になっており、外の風を感じながらやわらかいお湯に浸かることができた。無色透明の単純温泉は少し熱めで、アルカリ成分がぬるっと肌にまとわりつく。湯上がりは十分に保湿されてすべすべだ。

 夕食は縁側沿いの個室で準備いただいた。地元で採れた野菜や岩魚など、丁寧に作られた品々が並べられる。この新鮮な空気と水の中で作られた素材、美味しくないわけがない。クライマックスは和牛のほうば味噌ステーキ。分厚くて柔らかいお肉は、口の中に入れるとジューシーにとろけた。

 温泉の保温性が高いのか、翌朝起きるとすごく寝汗をかいていた。朝風呂で汗をすっきり流し、同じく朝食は縁側沿いの個室で外を散策する人を眺めながら、正しい和朝食をいただく。

 チェックアウト後は近隣の観光地、つりがね橋をわたったり、ごろごろ水を飲んでみたり。素晴らしい自然を味わい、天上の国を後にした。

 関西に住んで5年、こんなに素晴らしく自然と調和し、昔の伝統・文化と調和している温泉街があるとは知らなかった。いまだに行者も来るというから、神秘的でさえある。陸の孤島のひとつ、紀伊半島はまだまだ未開の土地ではあるが、寄り道入れて片道2時間なら、意外に近い。大自然のみならず、いにしえの日本の魂を伝える場所として、魅力的な洞川温泉である。

【洞川温泉 花屋徳兵衛】
住所: 奈良県吉野郡天川村洞川温泉
アクセス: (車)南阪奈道路-高田バイパス終点より国道169号南下-県道21号
源泉名: 洞川温泉(新泉)
泉質: 単純温泉(低張性弱アルカリ性低温泉)
温度: 30.7℃
色・味・匂: 無色透明・無味・無臭
効能: リウマチ性疾患・運動器障害・神経麻痺・神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復・健康疲労回復・きりきず・慢性婦人病・動脈硬化症・糖尿病・高血圧症

2017年11月06日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!