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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

信州・渋温泉

信州・渋温泉

急に休みが取れた。

というわけで、無理を承知で「明日宿泊」できる温泉宿の空部屋を検索。この猛暑だから、もちろん避暑もできるところである。あたってみるもんですねぇ、前日キャンセルが出たらしく、ラッキーにも信州・渋温泉の御宿・炭乃湯(すみのゆ)の予約が、ドタキャン価格で取れた。

名古屋から信州中野ICまで、車で約3時間。インターを下り、オリンピック道路を経て10kmほど走ると、湯田中温泉郷がある。その一番奥に位置するのが渋温泉だ。横湯川沿いの一般道を走っていくと、なにやら年季の入った温泉街が佇む。それもそのはず、ここは開湯1300年という、古い歴史を持つ温泉街なのだ。

石畳、そぞろ歩きの湯下駄の音、街のあちこちから漂う湯けむりと硫黄の匂い、公共の足湯場、旅館の軒先にある温泉卵・・・。日本人がイメージする「理想の温泉街」がここに存在している。“外湯巡り”が楽しめるという魅力は、黒川温泉(九州)、野沢温泉(信州)のそれと同じなのだが、何かが違う。

旅館で借りた浴衣と湯下駄を身につけ、9ヶ所ある外湯をまわりながら、その「何か」はなんだろう・・・?と考えていた。ここは、日本人がイメージするベタな温泉街で、観光客でいっぱい。なのに、なんだかやけにしっくりくるのは何でなんだろう・・・?
このこぢんまりとした温泉街には、約40箇所の旅館や数箇所の土産屋と一緒に、一般の民家や魚屋、酒屋、果物屋、カラオケスナック、寺社等が共存している。歴史ある温泉街という観光地に、時が止まってしまったような、ノスタルジックで昭和の香りがする庶民の日常生活が介在している。観光地特有のわざとらしさがない。そう、たぶんここの全てが「日常」であり、それがとても自然に感じられるのだ。

その証拠に、外湯で一緒になった近所のおばあちゃんが、毎日外湯に浸かりに来ていると言っていた。家にお風呂がない家も多いらしい。というか、こんないい外湯にタダで入れるなら、不要である。そして、全ての外湯の管理は、住民たちの手によって当番制で行われる。

9つの外湯は、全て湯質が違う。一番湯から九番湯まで別称がついており、それぞれに効能がある。(1)初湯(胃腸に効く)、(2)笹の湯(しっしん)、(3)綿の湯(皮膚病)、(4)竹の湯(慢性痛風)、(5)松の湯(神経痛)、(6)目洗いの湯(目と肌によい)、(7)七操の湯(外傷)、(8)神明滝の湯(婦人病)、そして(9)渋温泉の名湯・大湯(万病に効く)。全部毎日入ったら、天寿を全うした上にぽっくりいけそうな効能ばかりである。湯によっては、透明だったり、白濁してたり、赤茶色だったり黄色だったり、鉄分や硫黄の匂いがしたり、ちょっとしょっぱかったり・・・といろいろだが、全てに共通して熱い。それぞれの源泉は60度~98度くらいと熱いのだ。どの湯船にも水道の蛇口がついており、入浴する際は好みに応じて水を入れる。

宿泊した宿「炭乃湯」の露天風呂もそうだったが、湯質は全体的にどちらかというと、「ぬるぬる」というより「さらり」としている。温度が高いせいか、浸かると肌が「きゅっ」としまる感じ。湯上りの肌触りも、化粧水でいうと「しっとり」より「さっぱり」タイプである。

湯巡りするうちに、浴衣をいちいち脱ぎ着するのがおっくうになってきた。4番目くらいで、すでにパンツは履かず。昔の人たちはパンツなんてものはなかったからいいんだ、と言い訳がましい理由(?)を自分に言い聞かせながら、一気に9ヶ所を制覇した。

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取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!

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