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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

日本アルプスの秘湯 中房温泉

日本アルプスの秘湯 中房温泉

 最近秘湯に行っていないなぁ・・・と思い出したら、無性にディープな秘湯に浸かりたくなった。というわけで、一泊二日で行ける秘湯をすごい集中力で探し始めた。私の持つ秘湯のイメージは、当然だけど必ず山奥。海沿いの秘湯なんて開放的すぎて秘湯じゃない。山奥で、野天風呂があって、湯気がそこら中にもくもくしてて、硫黄の臭いが立ちこめて、たまに猿とか鹿なんかが出てきそうな(でもほんとに出てきたら困る)雰囲気のとこである。そんなイメージを思い描いてたら、頭の中に「北アルプス」の文字が浮かんだ。そんな経緯で辿り着いたのが、今回の中房(なかぶさ)温泉だ。秘湯なのに、高速出口から1時間ほどで行けるらしい。11月連休の1週間前なのに、宿に電話をしたらまだ2部屋空いていた。こういうところが秘湯のいいところ。11月の初旬の北アルプスの山奥、紅葉もすでに綺麗に違いない。

 安曇野インターを降りてから国道を30分ほど走ると、くねくねした山道に突入。高速の車の多さが嘘みたいに、周りに走っている車が1台もいない。紅葉終盤の枯葉がさわさわと音を立てる以外、何も聞こえないくらいの山奥を30分ほどドライブしたら、「中房温泉」の看板と共に湯煙がたちこめているのが見えてきた。道中、鹿1頭と猿の親子に出くわした。ここまでは、イメージ通りのディープな場所である。

 中房温泉の歴史の始まりは江戸時代(文政4年)だ。約200年前、生糸の艶出し用に明礬採掘をするためこの地に入った百瀬茂八郎という人が開湯し、湯小屋をしたのが始まり。湯治場としても多くの人々が利用した。皇太子殿下も宿泊されたことがあるらしいし、このいくつかの温泉や敷地内の建物は、国の登録文化財となっているようだ。

 宿に入りチェックインをすると、敷地内のマップをもらえた。もうひとつ最大の期待を抱いていたもの、もちろん温泉なのだが、なんとこの宿は、源泉の数が29本もあるのだ。しかも全部源泉かけ流し!とはいえ、人が入れる温泉の数は、足湯・蒸し風呂を入れると19箇所程。今はやってないが、6月から10月まで温泉プールもあるらしい。露天・内湯・貸切・混浴・足湯、とにかく全部ある。全ての源泉が90℃以上と高温のため、空冷・水冷の冷却方式をとっている。貸切は、開いてたら鍵持って勝手に入ってください形式。混浴も若干男女入れ替え時間はあるものの、基本はフリー。それぞれの素晴しい趣を持ったメインの大浴場が4箇所ほどあるのだが、全部混浴。確かに、これだけ多数の温泉があれば、男女分け制度を作るだけでも大変である。

 とりあえず、最初は保守的に貸切風呂「滝の湯」に入った後、混浴の「岩風呂」に浸かる。貸切は家族風呂みたいに小さな野天風呂で、一人きりでリラックスするには十分である。岩風呂は大きな岩が真ん中にある広々した露天風呂で、誰もいないのをいいことに誰かが入ってくるかもしれないスリルを味わいながら平泳ぎをした。その後、内湯の大浴場に入り、大きな丸太でできた立派な梁を眺めつつ、ゆったりと柔らかいお湯に浸かった。源泉は90度以上もあるため、加水は一切せず自然冷却をしている。源泉の成分がそのまま身体に染みこむようで、夜になると冷え込む山の秋でも、湯上りはぽかぽかで、肌もつるすべだ。

 温泉に期待しすぎて、夕食は正直期待薄目だったのだが、山の幸をたっぷりと使ったすごいボリュームの食事だった。八寸、お刺身、煮物、天ぷら、茶碗蒸し・・・ とても食べ切れなかったが、別メニューで高温の源泉で蒸したチキンやローストビーフ、自家製ソーセージなどがあり、それも名物料理のひとつのようだ。また、敷地内を散策すれば、卵、じゃがいも、ソーセージなど食材をフロントで買って、自分で地蒸料理をすることも可能である。

 翌朝、再び大浴場を1,2箇所はしごし、敷地内散策をしてチェックアウトをする。しかし、こんなに後ろめたい気持ちになったのは初めてかもしれない・・・だって、まだここの源泉半分も網羅できてないんだもの。もともと槍ヶ岳や穂高岳などの登山客の利用が多いというが、温泉オンリーだけを目的として来なくては、到底網羅できない。また来たらいいや、と思いながらも、日本国内の行ったことのない秘湯は一体あとどれくらいあるのだろうと思いを巡らせながら、標高1400mの秘湯宿を後にした。

【源泉掛け流しの宿 中房温泉】
住所: 長野県安曇野市穂高有明7226
アクセス: (車)中央道-長野自動車道-安曇野IC下車-R147経由約1時間
源泉名: 中房温泉
泉質: アルカリ性単純温泉、他
温度: 94.2℃, PH値9.1~9.3 *源泉により変わる
色・味・匂: 無色透明・微硫黄臭
効能: リウマチ性疾患・運動器障害・神経麻痺・神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復・健康疲労回復・きりきず・慢性婦人病・動脈硬化症・糖尿病・高血圧症
価格: 一泊二食付 大人\9,654~\21,750(税込)

2018年01月11日

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取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!

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