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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

奥飛騨 かつら木の郷

奥飛騨 かつら木の郷

 秋も深まり、山の紅葉も散り始めたころ、家族旅行に出かけることになった。
久々に三世代総出の旅行である。父親の退職祝いにと、思い切り贅沢な一泊旅行に選んだ行先は、何度足を運んでもコスパ(コストパフォーマンス)の高い奥飛騨・福地温泉に決定した。

 平安時代に村上天皇が湯治に訪れていたといわれる福地温泉は、時代の変遷を感じさせない山里にある。12軒の温泉宿しかない小さな集落だが、それぞれにこだわった風情とおもてなしで、顧客満足度も高い。辿り着くまでに紅葉で彩られた山をいくつも越えて行く。山が深まるにつれ、日常とは別世界に行くのだという高揚感も同時に高まってくるのだ。

 今回宿泊した宿は、150年前の豪農の館を移築した『かつら木の郷』。広い敷地に10室しかないこの宿は、全室囲炉裏の間のついた離れが長い廊下で複雑に繋がっている。私たちは、中でも最も広い古民家『欅家』を、贅沢にも一棟まるごと貸切にした。

 広いロビーに入ると、囲炉裏の灯火と古民家ならではの立派な梁のついた高い天井が目に付く。好きな柄の浴衣を選び、部屋に通される。欅家は、広いリビング、囲炉裏の間、和室の寝室が2部屋ついており、10名御一行様でも余裕で泊まれるスペース。専用の露天風呂と床暖房がうれしい。一泊ではもったいなすぎるくらいの離れである。その広すぎるくらいのスペースでひとしきりくつろいだあと、大浴場へ向かった。

 かつら木の郷の豊富に湧き出る温泉は自家源泉。敷地内より二本の源泉を引用する天黄泉である泉かけ流しのため、44~50度になる源泉は、季節によって湯温を自然調整して供給する。檜でできた内湯から露天に出る際、内湯と露天の境目がお湯であふれているのを見ると、豊富な湯量を認識させられる。意外にも透明でさらりとした熱めのお湯につかり、遠くから登る山里の煙を眺め、独特な静けさの中に身を携えた。

 お風呂の後は、大宴会である。
 後で提供されるであろう丸い五平餅がかわいらしく並んで香ばしく焼かれている部屋を横目に、個室に通された。地元の食材を使った囲炉裏会席。今まで味わったどの囲炉裏料理よりも目に美しく、上品な味付け。それでいてボリュームはすごい。飛騨牛も惜しみなく分厚くカットされており、炭火で焼くと独特の脂の甘みが口いっぱいに広がる。次々と出される雅なメニューを地酒と一緒に味わっていたら、あっという間に夜も更けていった。

 ちなみに、翌日の朝食もすごいボリュームだった。
 昨夜あんなに食べたのに、一体どこに入っていくんだろう。炊きたてのぴかぴかした新米、囲炉裏で湯気をたてる鍋料理、炭火で焼ける鯵の香ばしい香りが食欲をそそり、みんなでご飯のお櫃を3回もオーダーしたのだった。

 満腹になったお腹を抱えたまま、チェックアウトの時間を惜しむように、離れについている貸切露天に入る。先週降ったらしいなごり雪が朝日にきらきら輝くのを眺めながら、熱いお湯にじぃっと浸かった。

 チェックアウトをして外に出ると、冷たい空気が、温泉でいつまでも温まった身体をきゅっと引き締める。家族で集合写真を撮る。いつも別々の場所に住む忙しい家族を、久々に繋げてくれる時間。一泊二日というほんの短い時間だけど、こんな特別な空間はいくつになっても持ち続けたい。

 そして、長い間家族を支えてくれた父に感謝をしつつ、岐路についたのだった。

【奥飛騨 福地温泉 かつら木の郷】
住所: 岐阜県奥飛騨温泉郷福地温泉
電話: 0578-89-1001
アクセス
 車の場合: 名古屋 → 東海北陸自動車道 → 高山IC下車 → R158 → R471 → 福地温泉(高山市内より60分)
泉温(源泉): 46.3度(PH値:6.9)
泉質名: 天黄泉
色・味・匂: 無色透明・鉄味
効能(入浴): 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、慢性皮膚病、虚弱自動、病後復期、疲労回復、健康増進、動脈硬化症
料金: ¥18,000~¥27,000(一泊二食付き:大人料金)
公式HP: http://katuraginosato.co.jp

2013年01月04日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!

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