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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

隠れキリシタン殉教の地 雲仙温泉

隠れキリシタン殉教の地 雲仙温泉

 温泉天国・九州へは何度か訪問しているものの、唯一長崎県にだけはまだ足を踏み入れたことがなかった。それ故長崎は未知の土地。ハウステンボス、出島、カステラ、ちゃんぽんくらいが私の持つ長崎の知識レベルだったから、今回の初長崎訪問は、かつて450年ほど前に異国の地を踏んだポルトガル人と同様のものだったかもしれない。

 一泊という短期間で計画した長崎旅行は、まずお決まりのちゃんぽんランチから始まる。駅近くの人気店・永楽苑で、見た目こってり・味あっさりの魚介出汁のたっぷりきいたちゃんぽんを慌ただしくすすり、事前予約をしておいた軍艦島上陸ツアーに参加。噂には聞いていた世界遺産、快晴の空に似つかわしくない廃墟を実際に目の当たりにし、かつての住居人であるガイドさんの話を聞くと、生活を不本意に翻弄されたこの島の歴史を、期待以上にリアルに肌で感じることができた。

 その後文明堂総本店のカステラを慌ただしくお土産に購入した後、長崎市街を抜けて山道に入ること約1時間強、美しく大きな夕日を背中にしながら、今回の旅のメインデスティネーションである雲仙温泉に到着した。

 十数軒ほど立ち並ぶ温泉街の旅館の中で今回選んだ宿は、江戸時代より300年以上、外国人をも含む観光客を出湯で癒してきた老舗宿、「湯元ホテル」。宿のすぐ近くにある観光地、雲仙地獄からめちゃくちゃ濃度の高い硫黄泉を直接引いている温泉を持つ。正真正銘の源泉かけ流しが自慢の宿だ。

 チェックインをした頃にはすでに辺りは暗くなっており、夕食の時間をなんとか最終に引き伸ばしてもらって早速お風呂へ直行。十分なスペースを持つ内湯と、露天風呂のみのシンプルな造りであるが、予想以上の湯質のクオリティに驚いた。

 お湯が白濁して、硫黄臭がぷんぷんする。その見た目とは裏腹に、お湯に浸かるととっても肌触りの柔らかいお湯が身体全体を包み込む。地獄が隣にあるくらいだから熱めのお湯かと思ったら、湯番さんが毎日、お客様がちょうどよい温度で入れるようにと、地獄から引くお湯の温度管理をしてくれているらしい。さすがは300年以上も続く老舗旅館、大事に自慢のかけ流しのお湯を守り抜いているという心意気がうかがえた。露天風呂は目隠しで壁に囲まれて周りの景色が見えないが、温泉マニアにはその湯質だけで十分である。

 濃厚な硫黄泉にたっぷり浸かってさっぱりした後で、お楽しみの夕食である。有明海でとれたヒラメのお造りやアワビの踊り焼きステーキなど、島原半島の名物料理が次々と出てくる懐石料理を堪能した。お料理を運ぶ仲居さんの長崎訛りは耳に心地よく、壱岐の麦焼酎と相まって、程よく酔いが深まっていった。

 さて翌朝、若干飲みすぎてむくんでしまった顔を元のサイズに戻すため、一汗かきに朝風呂に行く。3度目の入浴をたーっぷり楽しんでチェックアウトしたら、すぐ隣の地獄巡りに出かけた。1年前のちょうど同じGWに散策した北海道・登別の地獄巡りを彷彿させたが、雲仙のそれは登別以上の規模である。今でこそ多くの観光客が訪れる土地ではあるが、「お糸地獄」「大叫喚地獄」など、それぞれの場所に物々しい伝説が残り、隠れキリシタンが殉教したという痛々しい歴史を垣間見ることができた。とは言え、快晴のもと地獄巡りのハイキングは、ぶくぶくと吹き上がる温泉を、地殻の鼓動のように感じることができ、そんな景色を新緑の中歩くのは本当に気持ちが良かった。

 果たして、私の初長崎旅行は、期待以上に内容が濃く、歴史を肌で感じる感慨深いものになったのである。400年前は殉教者を苦しめたという熱湯のお湯も、今となっては観光客を癒す湯質の高い硫黄泉。九州屈指の有名な温泉地として今後もこの泉質が守られていってほしいと思いながら、この旅最後の食事に、地元の食堂でボリューム満点の長崎皿うどんと唐揚げ定食を頬張った。

【雲仙温泉・湯本ホテル】
住所: 長崎県雲仙市小浜町雲仙316
アクセス: 福岡より諫早ICにて下車(2時間)、R57を約1時間 又は長崎空港より車・シャトルバスにて約1時間半
源泉名: 雲仙温泉
泉質: 酸性・硫黄泉・硫酸塩泉
温度: 53.5℃
色・味・匂: 乳白色・強い硫黄匂
効能: 神経痛、筋肉痛、関節痛、リウマチ、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔病、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、きりきず、糖尿病

2018年06月18日

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取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!

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