2009年08月23日
ワシントン・ナショナル・オペラで今季の新演出「ジークフリート」の初日をみた。19世紀ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーが北欧神話を素材とした楽劇「ニーベルングの指環」は、全体を上演するのに4日かかり、この作品は3日目にあたるが、今回は単独で上演された。
1950年代に作曲家の孫ウィーラントが極めて抽象化された舞台演出をつくり上げて以降、ワーグナー作品は元の台本をさまざまに読み替え、20世紀後半には機械文明や宇宙戦争を風刺した斬新な演出が相次いだ。さて今回の新演出は-。
幕が開くと高圧線鉄塔の下。「英雄」ジークフリートらは、ごみの山の前、壊れたトレーラーハウスで暮らしている。ホームレスの世界である。オバマ政権の最大の課題は経済再建。この舞台装置は極めて今日的だ。
一方、演奏は量感が多少不足気味とはいえ、破綻(はたん)がない。その点は今の米経済を反映していなかった。
(嶋田昭浩)