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ソウル 『成熟した自由』とは

2008年08月22日

 訪韓した日本の大学生と韓国の大学生に「韓国社会と若者」をテーマに話をする機会があった。

 ちょうど二十年前のソウル五輪直前、同年代の韓国人大学生が街頭デモで世の中を変えた姿を見たこと。民主化運動を担った世代の子どもたちが、最近の米国産牛肉輸入反対のろうそく集会を始めたこと。韓国民主主義の歴史はわずか二十年、などの話をした。

 学生は熱心にメモをとり、質問の手も次々と挙がったが、「成熟した民主主義とはどんな状態か」という問いには答えに窮した。

 数日後の光復節六十三年と建国六十年を兼ねる式典。大統領が「これからの六十年で成熟した自由を具体化する」と先の質問への回答のような演説をした。「外国人は韓国と言えば労使紛争と街頭デモを浮かべる」と続けたので、大統領の言う「成熟」とは静かな状態なのだろうか。でも、騒々しさを失えば、韓国らしさも失われるかもしれない。

 (築山英司)