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コタバト 南国の風景に悲しさ

2008年09月12日

 フィリピン南部ミンダナオ島のコタバトから車でわずか30分ほど。脇道に入り、デコボコ道を揺られながらヤシの木の間を縫っていくと、迷彩服に身を包み、機関銃やRPG(携行式ロケット弾)を抱えた兵士たちがたむろするチェックポイントに出る。

 政府軍と対峙(たいじ)するモロ・イスラム解放戦線(MILF)の拠点キャンプ・ダラパナンの入り口だ。さらに森の中を奥へ奥へと進む。道の両脇には数10メートルおきに兵士が立ち、こちらをじっと見つめる。ヤシの木が生い茂る南国の風景とおびただしい数の兵士の取り合わせは、いかにも「ゲリラの拠点」らしく、ある意味では「絵になる」光景だといえる。

 しかし、悲しい風景だ、といつも思う。同じ国民が2つに分かれて殺し合っている拠点の1つなのだ。一方で「絵になる」と思っている自分もいる。そのことがまた、悲しい。

 (吉枝道生)