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マニラ 夜の街で家族支える

2008年09月27日

 「私は自分が生きていくため、そして家族のために働いている。何も恥ずかしいことなんかしていない」

 マニラの繁華街で深夜働く女性がきっぱりと言い切る。「近所の人が変な目でじろじろ見るし、汚い言葉を投げかけられることもしょっちゅう」。嫌な思い出が次から次へと脳裏に浮かんだようだ。

 夜の街では、個人的な境遇を創作話で通す女性もいるが、多くは貧しさの中で働いて稼いだお金を、家族にも注いでいる。フィリピンで「家族」というとき、核家族にとどまらず、援助が必要な幅広い親類を含めることも多い。

 「私は売春なんかしていないのに、そういう目で見る人がいるのが悔しい」と言ったあと、しばらく考えてから付け加えた。「でも、確かに、売春をしている友達も何人かいる…。でも、それも家族のため、生きていくため。恥ずかしいことじゃない。誰だって、必死に働いて生きていかなきゃいけない」

 (吉枝道生)