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宜蘭 年に1度鬼月の決戦

2008年09月25日

 台湾の旧暦7月は「鬼月」。あの世の門が開いてさまざまな霊がこの世に出てくるとされる。各地で行事が催されるが、極め付きは鬼月末日(今年は8月30日)の深夜に台湾東部・宜蘭県であった「頭城搶孤」だ。

 杉の丸太が支える“舞台”の上に、13本の竹のやぐらがそびえ立つ。高さ約40メートル。各地区の男たちがチームを組み、よじ登って頂上の旗を切り落とす速さを競う。

 年に1度の決戦を前に男たちは落ち着かない。酩酊(めいてい)感が得られるビンロウで口を真っ赤にし、たばこを吸い、ビールをあおる。陶酔感を絶頂にしてから、ヨーイドン。あたかも天空を目指してはい上がる姿が、この世でひと月過ごした魂を再びあの世に送り返すという行事の由来を体現する。

 「他県のチームも参加しています。日本からもぜひどうぞ」と地元頭城鎮の鎮長。200年以上の歴史がある宗教行事に「よそ者」を招くきっぷの良さに台湾らしさを感じた。

 (栗田秀之)