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北京 立派な大会誰のため

2008年10月28日

 北京パラリンピックでは、各国の障害者の選手が「これだけ温かく迎えられた大会は過去になかった」と中国の対応を絶賛した。

 競技場は段差を無くすなどバリアフリーが徹底され、選手用バスはすべて車いすリフト付き。選手村にある観賞用の池が「視覚障害者に危ない」と声が出ると、学生ボランティアらが翌日には池を鉢植えで囲った。日本選手団の大久保春美団長は「パラリンピックはいつも五輪の付け足しという扱いだった。中国は私たちのための大会をしてくれた」と感謝した。

 各競技場を取材した記者の印象は違った。車いす専用の応援席は外国人ばかりで、中国人の障害者を見かけなかった。歩道はでこぼこ、路線バスにリフトなどない北京では、障害者が自力で会場にたどり着けないし、政府が積極的に障害者を招いた形跡もない。

 ぴかぴかの競技場から何の変化もない街に戻ると、誰のための大会だったのか考え込んだ。 (平岩勇司)