2008年11月10日
フランス中部のクレルモンフェランは、14万人が暮らす山あいの市。14世紀までに近くの休火山の岩で建てられた真っ黒な大聖堂を眺めながら、安食堂の献立表からアリゴを選んでみた。
ゆでて裏ごししたジャガイモをたっぷりのチーズと混ぜ合わせた単純な料理だ。マッシュポテトそっくりだけれど、粘り気がある。ソーセージを一本添え、熱々のメーンの皿として供された。イモ好きにはたまらない。
先週、仏リベラシオン紙の一面トップにでかでかと新ジャガの写真が掲載された。皮付きのまま6個並べて白い皿に載り、フォークが刺してあった。なかなかうまそうだが、見出しは「景気の後退」。昔の日本のように、イモは貧しさの象徴でもあるのだ。
クレルモンフェランのあるオーベルニュ地方は、かつてブドウも麦もできないやせた土地だった。だからこそ工夫した伝統料理アリゴ。金融危機で世界が揺れる中、味わい直したい。 (清水俊郎)