【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. アジア
  5. 南投 温泉宿の思わぬ情け

南投 温泉宿の思わぬ情け

2008年11月11日

 台湾はほぼ全域に温泉がある。お風呂好きにはこたえられないが、観光とは全く違う側面から温泉宿の情けを味わった。

 日本人にも慕われたホテルの女性従業員が台風による土砂崩れ災害の犠牲になったと知り、南投県の温泉ホテルを訪ねた時のことだ。悲劇の直後にいきなり外国メディアがやってきたとあって、同僚たちは警戒心をあらわにした。しかし、話を重ねるにつれ、一人二人と従業員が集まってきた。切々と彼女への思いを訴える。

 夕食は予約していなかったが「簡単な家庭料理で良かったら」と勧められ、皆と一緒に食べた。「ここの露天風呂は最高だよ」と自慢された温泉は、言葉通り格別だった。

 翌朝、チェックアウトの際に「料金は要りません」。さすがに仰天して固辞したが、金額は定額以下だった。後日、届いたメールにはこう記してあった。「風雨を恐れず、苦労も辞さず、わざわざ駆けつけてくれて感謝します」 (栗田秀之)