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ニューヨーク 広がるハルキの世界

2008年12月25日

 作家の村上春樹さんが十月上旬、文芸誌「ニューヨーカー」主催のトーク会で、マンハッタンにやってきた。五百席はすぐ完売。当日のキャンセル待ちも長蛇の列。あきらめかけた開演直前、韓国人の女の子が「友人が来なくなった」と余った券を譲ってくれた。

 会場は米国人を中心に多国籍のファンで満員。村上さんは「僕は一人っ子で、本と猫、音楽が友達だった」と振り返り、十五歳の時に出会ったジャズの 影響を紹介。「文章は音楽から学んだ。文学で大事なのはリズムとハーモニー、自由な即興」と述べ、音楽を奏でるように文章を書くこと、その楽しさを英語で 丁寧に語った。

 ノーベル文学賞候補にもなる大作家だが「僕は変な話を書くけど、普通の人ですよ」と笑いも。最近、二年弱を費やした新作の長編を脱稿したという。「僕の財産は想像力だけ」と語るが、その泉の豊かさは計り知れない。次はどんな世界で人々を引きつけるのだろう。

(加藤美喜)