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マニラ 所変われど臭い同じ

2009年01月05日

 「ほかに何か聞きたいことがあるか。もう十分だろ」。マニラ警察の殺人課で、つまようじをくわえた刑事がニヤッと笑う。懐かしさが込み上げた。

 というのも、彼の表情や話し方、全身から醸し出される空気が、日本で殺人を担当する捜査一課の刑事とそっくりだったからだ。

 他の国は知らないが、日本とフィリピンの「刑事部屋」の雰囲気はよく似ている。彼らの話し方、笑い方。鋭い視線、頑固そうな顔のしわ。それでいて人懐っこい笑顔。

 ちょっと汚れた室内の雑然とした感じもまた似ていて、懐かしい。違う文化の中でも、同じ仕事をすると共通の臭(にお)いを醸すようになるのだろう。

 つまようじをくわえた刑事は、かつて手掛けた別の殺人事件の話をしてくれた。過去の事件の思い出を語るところも日本の刑事とそっくりで、つい苦笑いしながら相づちを打った。

 (吉枝道生)