2008年12月31日
出張の帰り、旅客機のパイロットたちのストライキに巻き込まれた。予約していた夕方の便が欠航になり、次の便も遅れて離陸は約四時間後。パリに戻ったのは深夜だった。タクシーに乗り、運転手にぼやいた。
「あなたたちフランス人は本当にストが大好きだね」
運転手は穏やかに否定した。
「それは恵まれた人たちだけ」
男性はカンボジア生まれ。15歳の時に母親とパリに移り、もうすぐ30年になるという。当時、内戦状態の母国から抜け出した難民だ。タクシーを運転する権利を3年前に手に入れたばかり。
「だから、ストなんかできない。電話で私を呼んでくれるお客さんもいるのに」。男性は私がいる後部座席を振り向いて笑った。日本人と同じほほ笑みだった。
フランスではこの秋も、パイロットのほか鉄道会社の社員、医者、教員、大学生などが権利の主張に励んでいる。
(清水俊郎)