2009年06月16日
中国四川省西部のチベット族自治州康定県で、標高3400メートルの民宿に泊まった。高山病による頭痛に耐えて眠りにつくと、深夜に5人の警官が部屋になだれ込んできた。
「ここは外国人が入れない地域だ。あなたの安全のため、街まで戻ってもらう」
昨年3月のチベット騒乱から1年。警察はチベット住民の不満を取材する外国人記者を捜し回っていた。昼間に1度は尾行をかわしたのだが、民宿側に通報されたようだ。
「仕方ない。チャーターした車で帰るよ」と答えると「安全のため私たちが送る」。警察車両で10時間、省都の成都市に戻ると別の警官が尾行。記者が食堂に入れば隣でジュースを飲む。「なぜ付いてくる?」と尋ねても「あなたの安全のためだ」。中国はどこも危険な無法地帯らしい。
北京への帰途、空港に着くまで計20人の警官に付け回され、ひと言だけ彼らに言った。「もっと他にやることがあるんじゃないか?」
(平岩勇司)