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マニラ 法よりワークシェア

2009年06月17日

 経済危機の中、東南アジアに進出している企業も苦しんでいるが、受け入れ側の国ももちろん苦しんでいる。マニラで、労働法や事業再編の法的手続きに関するセミナーがあり、参加してみた。講師のフィリピン労働省担当者と出席者の間で、真剣なやりとりが交わされた。

 「最低賃金以下の賃金ということも可能か」という質問があった。フィリピンでは最低賃金が法律で決まっており、マニラでは日給382ペソ(約750円)だ。

 「それは違法だ」との答えを予想していたが、労働省の答えは違った。「公式にいいとは言えない」と前置きしたあとで「しかし、会社が厳しい状況にあって、本当に苦しいのであれば、例外として認めざるを得ない」というのが回答だった。たとえ最低賃金が守られなくても従業員を解雇されるよりは-という苦渋の思いが透けてみえた。

 (吉枝道生)