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台北 主権堅持の魂眠らず

2009年08月08日

 台湾の独立と民主化を訴えて1989年4月7日に焼身自殺した言論人、鄭南榕氏の20年追悼会は、東シナ海を望む山あいの墓地で営まれた。情感豊かな台湾の歌とともに、日本の「千の風になって」が弦楽器で演奏された。

 鄭氏は戒厳令下の84年、週刊誌「自由時代」を創刊。国民党政権が47年に台湾人を虐殺した「2・28事件」の真相究明を初めて政府に要求し、タブーを破った。その後反乱罪に問われ、警官らに包囲された社内の編集長席で自ら火を放った。41歳だった。

 壮絶な死の直後、残された妻の葉菊蘭さんは「彼は非情だ。でも彼を愛し、尊敬している。なぜなら、彼は台湾全部を愛したから」と泣き崩れた。

 そして、今。葉さんは「馬英九総統が中国に傾斜しているので心が痛い」と嘆き、夫が命を賭して守った台湾の主権堅持を訴える。墓地の上空を吹き渡る風に、夫の存在をはっきり感じたに違いない。 (栗田秀之)

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