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カイロ 神の手による障害?

2009年09月04日

 「もし豚肉が欲しかったら、また来いよ」

 カイロのキリスト教系コプト教徒居住区の養豚業者が、小声でささやいた。「いつでも用意してやるから」

 新型インフルエンザ対策で、エジプト政府は豚30万頭強の全頭処分を決め、この地区の豚はすべて持ち去られたはず。だが、一部の豚さんはどこかに隠れているらしい。

 政府は時に強権的にものごとを決めるが、庶民レベルまでなかなか方針が貫徹されない「緩さ」が、エジプト社会の特徴。交通法規を厳しくしても、運転マナーがなかなか変わらないのもその一例だろう。豚肉問題も、全頭処分までは無理な気がする。

 この養豚業者は、その場で肉をさばいてくれると言う。正規の店では品薄も予想されるから、魅力的な提案だ。当局に見つかったら逮捕されるだろうか。迷うところだが、念のため、同行のエジプト人助手には「ここの住所を忘れないように」と頼んでおいた。 (内田康)