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マニラ 路上の姿に友しのぶ

2009年09月08日

 タビオスさんが死んだ。毎月2回、支局に現れる新聞代の集金人だった。集金が済むと、来客用のいすに座っておしゃべりを楽しみ、帰って行った。

 彼が住んでいたのは、支局すぐ近くの路上だ。夜になると道端に体を横たえ、朝を迎える。生前の彼の話によれば、若いころは船員だったが、家族と別れてからは月1000ペソ(約2000円)程度の安い部屋を借りて、一人暮らしをしていた。しかし、そこで身の回りの物を盗まれ、路上生活を始めたという。

 支局員が「路上で寝るのは体に悪いから、安いベッドを借りた方がいい」と簡易宿泊所を紹介したが、年金がもらえる65歳までは頑張る、と笑っていた。

 深夜、街角の路上に、大勢の人が寝ているのを目にする。母親が赤ん坊や幼児を抱きしめて眠っている。お年寄りがやせた体を小さく折り曲げている。彼らを見るたび、タビオスさんの真っ黒に日焼けした顔を思い出す。

 (吉枝道生)