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マグニトゴルスク 警戒するほど傷 露呈

2009年06月18日

 終始、妙な空気を感じた。巨大製鉄会社の企業城下町、ロシアのマグニトゴルスクへ出張した時のこと。目的は経済危機取材。まずは職業紹介所で失業の現状を聞いた。

 ところが次に予定していた製鉄会社は、訪問直前に取材キャンセル。理由は「悪いことを書くつもりだろう。職業紹介所から連絡があったぞ」だった。売り上げの変化を聞いた商店に追加取材の電話を入れると「あなたの直後に治安機関の人が来た。何を話したかきつく聞かれた」。

 市中心部で製鉄会社への抗議集会を開く元従業員たちがいた。言い分を聞こうと近づいたら複数の警官が待っていたかのように現れ“職務質問”。市職員と名乗る人物に、写真まで撮られた。

 経済悪化で、政府への抗議行動が続くロシア。政権は時に特殊部隊も使って鎮圧に躍起だが、国民の怒りをどう収めるつもりなのか。まとわりつく警官や市職員に尋ねた。「何を恐れているのですか」と。 (中島健二)