2009年10月26日
取材先の知人と食事をした後、深夜のマニラをふらふらと歩く。「クヤ(お兄さん)」と声を掛けてくるのは、よく見かける花売りの少女だ。
「まだ家に帰らないから、いらないよ」と言っても、7、8歳に見える2人の少女が「おなかが減った」と言いながら、ずっと付いてくる。それもよくあること。
ふと「いくら?」と聞いてしまったのは、2人がはだしであることに気付いたからだ。汚れた細い素足で、でこぼこの路面を踏みしめていた。
以前、子どもに靴やサンダルを贈る女性活動家に取材した。「亡くなった父が子ども時代にはだしでつらい思いをしたから」と話していた。彼女の父親は広く尊敬された国会議員だった。
そんなことを思い出しながら、花を買ってしまった。小さな赤いバラだった。2人はお金を握りしめ、次の客を探しに夜の街をぺたぺたと走っていった。 (吉枝道生)