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ワシントン もう記録作らないで

2009年09月10日

 戦没将兵記念日(メモリアルデー)の5月25日、ワシントン市内にある第二次世界大戦の戦没者慰霊碑を訪ねた。ベトナム戦争の慰霊碑とは違って静かで、退役軍人の姿も少ない。赤いバラとともに亡くなった戦士のモノクロ写真が目立つ中、仲間の功績が色あせないよう、観光客らに戦争を語り歩く男性がいた。

 米海軍工作艦の技術兵として終戦まで西太平洋の海戦を支えたウェスリー・ニコルスさん(91)。ここで週1回、自らの戦争体験を語りつつ、ネット上のデータベースに先の大戦に従事した米国民の名前をできるだけ多く刻んでもらおうと、ウェブ・アドレスを記したカードを配り歩いている。

 「次世代のためにも記憶は記録に残さないとね」とニコルスさん。イラク、アフガニスタンの2つの戦争で一色だった記念日、記憶を風化させない大切さを感じた一方、新たな「記録」がいつまで増え続けるのか、考えさせられた。 (岩田仲弘)