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ノッティングヒル 洒落た街にも厳しさ

2009年10月14日

 洒落(しゃれ)た街並みが続くロンドン西部ノッティングヒル。野宿者のスティーブ・モルガンさん(40)は街頭でホームレス自立支援誌「ビッグイシュー」を売る。元バーテンダーで、2001年の米中枢同時テロ後に故郷英国へ強制送還された。

 20年前に米国へ渡り結婚した。妻の浮気で離婚を経験、10代の1人娘は元妻と住む。「娘と会えないつらさに比べたら野宿者の苦しさなんて」

 同時テロ後に外国人の取り締まりが強まり、モルガンさんは身分証明書類偽造の疑いで5カ月収監された。最後は役所のミスと分かったが、収監中に養育権は元妻へ。子どもとは面会禁止、銀行口座は養育費用に凍結され、野宿者になった。

 1冊1ポンド50ペンス(約240円)の雑誌を売るかたわら救急活動のボランティアに加わる。「社会に役立ち、娘に顔向けできるようにしたい。なんとか父親の顔を忘れないうちに」 (松井学)