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ソウル 歴史変えた訂正申告

2009年10月28日

 8月に金大中(キムデジュン)元韓国大統領の死去を報じるにあたって、悩んだのは生年月日だった。

 戸籍上は1925年12月とある。だが、元大統領側近は本人が24年1月と言っていたという。過去の日本メディアの報道を見ると戸籍の方をとっていたが、韓国メディアの表記は本人申告の方を使っていた。本紙は本人の意思を尊重しようと決めたものの、なぜ戸籍の生年月日が事実と違うことになったのか、あとで元大統領からの聞き語りをまとめた自叙伝を読み、答えを知った。

 故郷の木浦商業を繰り上げ卒業後、「わが家の大問題は私が日本の軍隊に徴兵される年齢になったこと」だった。当時戸籍訂正は珍しくなく「父はいろいろ考えた末に戸籍の生年月日の訂正申告を思いついた」。徴兵検査は実際から2年遅れの45年春となり、召集令状がくることはなかったという。元大統領がもし戦争にいっていたなら韓国現代史は…と思わずにいられなかった。 (築山英司)