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台北 内に厳しく民に厚く

2009年11月01日

 台風8号による豪雨災害への不手際で総辞職した台湾行政院(内閣)。対応の遅れはもちろんだが、被害が拡大する中、何人かの閣僚がホテルで食事をしたり、理髪店に行くなど、当事者意識や庶民感覚のなさも世論の猛反発を買った。

 新しい内閣を率いる呉敦義行政院長(首相)の言動には、前内閣の轍(てつ)は踏まない、という意識が随所ににじみ出ている。

 就任直後に放った言葉は「庶民にとっての小さいことが政府にとっての大きなこと」。早速、その日の夜には南部に移動し、初仕事として台風の被災者と面談、避難所に宿泊もした。

 被災地の視察では、過剰な警備を控えるよう求めた。馬英九総統の視察時、周囲から「救助作業の邪魔だ」などと罵声(ばせい)が飛んだことを踏まえたのだろう。

 有能だが、一部の同僚からは「冷たい」「近寄りがたい」と煙たがられる呉院長。庶民には温かい人であってほしい。 (栗田秀之)