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アラバット 真の贈り主はだれ?

2009年11月30日

 世界食糧計画(WFP)のヘリコプターに乗せてもらい、フィリピン中部アラバット島に向かった。台風禍に苦しむ島民に救援物資を配るヘリだ。陸路のない小島なので、比政府がヘリで輸送を依頼した。

 乗り込んで驚いた。クルーはすべてロシア人、機内の注意書きもロシア語だ。WFPの入札でこの仕事を請け負い、ロシアからやってきた民間ヘリだという。実は、この物資輸送の費用を負担しているのは日本。ヘリには小さな日の丸のシールがはられているが、気付く人はまれだろう。

 日本の資金によるロシアのヘリで運ばれたWFPの支援物資は、現地でトラックに載せ替えられ、待ち受けていた島民に地元市長が一人ひとり手渡した。物資と引き換えに市長は島民と固い握手を交わし、島民は市長に謝意を述べる。

 島民たちは物資をだれからの贈り物だと思っただろうか。 (吉枝道生)