【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. アメリカ・カナダ
  5. ニューヨーク まず$とにらめっこ

ニューヨーク まず$とにらめっこ

2010年01月13日

 「おめでとうございます。ところでお支払いの件ですが…」。病院からの電話はあいさつもそこそこに本題に入った。

 11月下旬に妻が出産してから4、5日後。請求書も届いていないのに「お宅は出産をカバーする保険に入ってないですね。とりあえず前払い金を」と要求された。

 次は麻酔医から電話。米国では担当医師からも別に請求が来る。妙に明るい声で「保険がない方には今なら特別に3割引き」とまるで車のセールストーク。早めの支払いを促す意図が見え見えだ。

 国民皆保険制がない米国では、病院側も取りはぐれを防ぐのに必死。一方、医療費相場は不透明で、一見(いちげん)の高級すし店で「時価」のねたを注文するような緊張感がある。医師の説明を聞くたび、頭の中に「$」印が駆けめぐった。

 虫垂炎の手術を受けた支局の助手は、病院と保険会社と交渉し、自己支払額を当初の10分の1に減らしたとか。やれやれ、これからが本番か。 (阿部伸哉)