2010年01月14日
リトアニアの首都ビリニュスの中心部には、突き出るように丘がそびえている。頂上には首都発祥伝説のゲディミナス城が立ち、そこから見る旧市街は、建物群の赤い屋根がじゅうたんのように広がり美しい。城には黄、緑、赤のリトアニア国旗が独立前の1988年から掲げられているという。
久々にここを訪れた先日夜、出張で来ていたロシア人がその旗を見て「ロシア国旗だ」と言い出した。見ると、確かに白、青、赤の同国旗に見えないこともない。
ロシア人は、通り掛かった市民らにまでその発見を伝えた。周囲は「まさか」とざわついたが、結局、ライトアップの光の加減で違った色に見えただけと分かった。確認した現地の人は「そんなことあるわけないだろう」と、驚くほど激しい非難を彼に向けた。
旧ソ連の圧力に対し、血を流してまで独立を獲得したリトアニア人には、ロシアへの複雑な思いがある。それをあらためて知らされた気がした。 (中島健二)