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ローマ 年頭に祈る 友の回復

2010年01月30日

 ローマの年末年始の祭り気分は、クリスマスイブに始まり正月6日のエピファニア(公現祭)で終わる。それを待つかのように大学教授の友人(63)から電話があり「病院から」と言うので驚いて駆け付けた。

 友人は少しやせたように見えた。大みそかの午後、首や背中に激痛が走り半身がマヒしいすから立てなくなった。キャスター付きのいすで移動し、夫人運転の車で救急病院に。

 年始の祝杯に沸く看護師や患者を横目に次々と検査が行われたが、休暇をおして出てきてくれた医師は「私はカトリック。祝祭はイブの祈りで終わっていますからご安心を」と言い、なんと元日の朝4時に手術が始まったという。

 手術で足の指先の感覚だけは戻ったが、夫人によると友人の症状は想像以上に深刻で、マヒは昨秋摘出した悪性黒色腫の転移が原因だと涙声で語るのだった。友人本人は、まだ自身の病状を知らされていないという。 (佐藤康夫)