2010年04月21日
「英国はバイナルを買うには、最高だよ。安くて豊富だ」。2年前に赴任したころ、英国人の同僚に言われた。バイナル? スペルはVinyl、ビニールだ。そんなものが豊富で何がいいのか…と思ったら、レコード盤のことだった。
確かに、レコード天国である。何しろ欧州の音楽産業の中心地で古い物を大切にする国民性だ。慈善団体が運営する中古品店では、1ポンド(約140円)からある。コレクターの遺族が慈善団体に寄付するせいで、掘り出し物が多い。
レコードとは20年余縁がなかったが、安い中古プレーヤーを入手して聴き始めた。昼食のサンドイッチが3ポンドもする物価高の国で実に経済的かつ魅力的な趣味ではないか。
音楽好きの妻も最初は歓迎していたが、50枚を超えるころ、態度が硬化した。「日本に帰ったら、狭いわが家のどこに置くのか」と追及される。指摘は正しい。レコード天国に暮らす楽しみは消えつつある。
(星浩)