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ローマ 心通わす厳かな葬儀

2010年07月19日

 悪性腫瘍(しゅよう)の手術を受けた友人が3カ月の闘病後亡くなった。ホスピスで治療を受けながらの最期だった。夫人の希望で結婚式の礼服を着せられ病院内の霊安室で一晩を過ごす。通夜や香典の習慣はなく花輪代もがん治療研究の寄付に回された。

 葬儀場は、遺志を尊重し市内の非宗教施設を探したが、墓地内の定員40人の手狭なものしかなかった。無宗教者が被るカトリック国ならではの不都合といえる。幸い故人が勤務していた大学の好意で大講義室を利用させてもらった。

 故人がいつも立っていた教壇の上に置かれた棺(ひつぎ)は、左派知識人のエスペラント活動家として活躍した故人の思想を象徴するかのように赤い花と緑の葉のみで飾られていた。

 バッハやモーツァルトの曲が流れるなか、学生を含む500人以上が参列し、厳かで心の通う葬儀となった。友人らの挨拶(あいさつ)を聞きながら泣きはらす女学生たち。あらためて故人の人柄が偲(しの)ばれた。 (佐藤康夫)

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