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緑島 監獄内に前衛芸術?

2010年06月12日

 台湾南東沖の離島、緑島。コバルトブルーの海に囲まれた台湾屈指のリゾートだ。台湾の悲惨な歴史を刻んだ場所でもある。国民党独裁政権が1951年から政治犯を収容して、長らく「監獄島」と呼ばれた。

 収容されたのは、共産党スパイなどの容疑で弾圧された民衆。多くが冤罪(えんざい)で、銃殺された人も数多い。台湾政府は、かつての監獄施設を人権文化園区として整備し、5月から全面公開した。

 見学後、違和感を持った。緑島人権芸術祭という行事が開かれており監獄内部に前衛的な芸術作品が展示され、当時の様子がイメージできない。

 たまたま、かつて収容されていた男性が居合わせ、10坪ほどの広さの監獄を指さし「ここに40人が詰め込まれていた」と教えてくれたので非人道ぶりが理解できた。

 歴史の伝承は、事実を正確に伝えないと罪作りになる恐れがある。 (栗田秀之)