2010年09月29日
民族衝突で大勢の犠牲者を出した中央アジア・キルギス南部オシ。郊外の空港の狭いホールで100人余りの乗客がひしめいていた。
取材を終えた帰路。早朝便だったが、夜間は外出禁止のため、搭乗に間に合うには前日から空港で夜を明かすしかない。ホールの隅でひざを抱えて座っていると、隣にいた50歳ぐらいの女性が話し掛けてきた。
あちこちで民族間の憎しみの声を耳にしたことを話したら、ウズベク系だというその女性は突然、近くにいたキルギス系の男性と握手して、こう言った。
「これが本当の姿よ。ジャーナリストなら真実を伝えて」
彼女が言うには、対立は誰かの陰謀で、本当は民族間に憎しみなどないという。
正直、そのまま、うのみにはできなかったが憎しみが民族間のすべてを支配しているわけではないらしい。
彼女がくれたマンティ(蒸しギョーザ)をほお張りながら、ちょっとうれしくなった。 (酒井和人)