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フレデリックステッド 意外な色は真実の姿

2010年10月08日

 みるみる暗い雲が頭上を覆い、横なぐりの雨とともに雷鳴がとどろく。あわてて釣りざおを手に埠頭(ふとう)の事務所の軒下へ逃げ込む。毎日のことだ。1493年にコロンブスの一団が到達したカリブ海・米領バージン諸島最大のセントクロイ島。人口732人(2000年国勢調査)の静かな西岸の町フレデリックステッドを夏休みに家族と訪れた。

 激しい雨の中、首を縮めながらも柱の上で海を見据えるカッショクペリカン。約10メートルの高さから海面へ垂直にダイブし魚をとる姿は豪快だ。「ペリカンだよ」「えっ…」。日本の動物園でモモイロペリカンを見慣れた家族は、焦げ茶色の鳥を前にして意外そうだ。

 メキシコ湾の原油流出事故ではカッショクペリカンなど多くの野鳥が油まみれの甚大な被害を受けた。ただ、洗剤で洗われる鳥たちの画像を見て、元の色と汚れを取り違えた人もいるのでは…。現場を伝える難しさをかみしめる。(嶋田昭浩)