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ローマ 変わる店 消える記憶

2010年10月15日

 古代から続くローマの街並み。石造りの外観は不変に見えるが、市街の「空洞化」が進行している。職人や生活者の街から観光・消費の街へと変容しているのだ。

 自宅近くでも食器店が外国系ハンバーガー店に、洋品店が中国人経営の1ユーロ・ショップに、書店がコールセンターに、時計店がケバブ店に、軽食喫茶が観光客向け土産物店にとって代わられた。

 家賃の値上げで立ち退きを余儀なくされた例も多い。昨年暮れになじみのパン店が家賃の3倍アップを迫られ突然閉店した。

 「ピザあるところにマフィアあり」と地元でいわれるが、マフィアと関係がある飲食店も。麻薬密売の金が架空営業で洗浄されるケースも多いという。短期間でリニューアルしたり現金払いを求め客が少ない店は要注意という。

 店舗の変貌(へんぼう)は激しく悲しいかな、以前の店を思い出せない。人も街も、その「記憶」を喪失し空虚になっていくのか。(佐藤康夫)