2010年10月29日
8月末、「ゲイ・タウン」として知られるサンフランシスコ市のカストロ通りを歩いた。1970年代、同性愛者であることを明らかにして市議となり、その権利拡大に努めたハーベイ・ミルクの足跡を訪ねるためだ。
サンフランシスコの連邦地裁は同月、同性婚を禁じた改正カリフォルニア州憲法は違憲として同性カップルの婚姻届を受理する決定を下した。「そのときはここでもパーティーをやった。みんな大騒ぎだったよ」。生前にミルクがよく訪れたというバーの店員男性は振り返った。
だがその後、連邦高裁は「結婚の定義をなお慎重に見極める必要がある」と一転、執行の差し止めを命じた。
11月の中間選挙が迫る中、抗議運動が盛り上がっているだろうと思いきや街は静か。経済一色の選挙で同性婚の是非は争点にならないようだ。高裁は12月以降、再び判断を下す。「またにぎやかになるさ」。ミルクの写真を背に店員はつぶやいた。(岩田仲弘)