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マニラ 渋滞縫い馬車が行く

2010年11月17日

 夕暮れ時になると、マニラ湾沿いにある支局の前を、家路につくカレッサ(馬車)が通り過ぎていく。軽快なひづめの音が聞こえてくると「もうそんな時間か」と思い、窓外に目をやる。ヤシの木のすき間から、マニラ湾に沈む陽(ひ)が見える。

 支局周辺のカレッサは観光客目当てが多いが、近くのディビソーリア市場や中華街には、たくさんのカレッサが並び買い物客の気軽な移動手段として活躍している。

 渋滞の中を通り抜けていくカレッサをみていると、不均衡な経済発展のひずみや、絶望的な貧富の差に思いがいく。馬車の走る音はマニラで最も好きな音の一つだが、人々の暮らしについて考えさせられる音でもある。

 愛すべきこのおんぼろ馬車は、いつまでマニラに存在し続けるだろうか。カレッサがマニラから消えてなくなるとき、この街の住民は今より豊かになっているだろうか。ひづめの奏でる音を聴きながら、いつも考える。(吉枝道生)

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