2010年11月29日
ドンドンドン!とホテルの部屋のドアを激しくノックする音。反日デモが起きた中国四川省綿陽。ベッドから体を起こし時計に目をやった。未明の3時半だ。ドアののぞき穴から目を凝らすと、外には警察官が計6人。
ドアを開けた途端、どかどかと踏み込まれた。主任とおぼしき1人が警察章を掲げ「身体の安全のため。今すぐ綿陽から出て行きなさい」。取材の自由が保障されていることなど理屈を並べてみたが有無を言わせない。
中国各地で相次いだ反日デモ。社会の不安定化を恐れる中国当局は、国内メディアの報道を統制。日本メディアには、政治的に敏感な取材をさせたくない時の決まり文句で、締め出そうとした。
強制退去先の四川省の省都、成都までの120キロの車中。隣に座った公安当局者は「綿陽のデモを記事にされたら地元警察としてのメンツも立たないんだわ」と耳元で懇願。
成都に着くなりタクシーを拾った。「綿陽まで」 (朝田憲祐)