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ソウル 2人が支えた慰霊祭

2010年11月25日

 ソウル北部の山のふもとにある慧光寺で、20回目の日本人物故者慰霊祭が行われ、初めて参列した。昨年から日本大使館が主催に加わったが、2人の韓国人の篤志家が慰霊祭を支えてきた。

 日本と韓国の国交がなかった1964年、西本願寺ソウル分院の跡地で、日本人とみられる2000余体の遺骨が見つかった。日韓を仕事で往来する水産会社経営の李興烈さんが、韓国の仏教系大学の依頼で遺骨返還に奔走した。その後、ソウル市などがつくった慰霊碑が反対派に壊されると李さんは私財を投じて87年に慧光寺に慰霊碑を建てた。慰霊祭が同時に始まった。

 慰霊祭で仏への献茶を行ったのは茶道家の申雲鶴さん。「最初は誘われてだが、いつの間にか義務になった」と笑う。2004年に引退した李さんから主催者を引き継いだ。

 李さんは昨年5月に永眠。申さんは足の骨折で前回から欠席している。2人の無私の行為に心から感謝したい。

 (築山英司)