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ロンドン 不遇でも良心失わず

2010年12月22日

 夜のテムズ川へ、20代の白人女性が身投げした。通行人の悲鳴を聞いて、真っ先に川へ飛び込んだのが野宿者の男性アダンさん(37)だった。

 流れに巻かれ、水を飲みながらも女性の体をつかみ、桟橋に流れ着いた。運び込まれた病院では2人とも低体温だったが、女性は一命を取り留めた。ただ、アダンさんが川岸に脱ぎ捨てたセーターや帽子は、誰かが持ち去っていた。

 アダンさんが時々、身を寄せるというロンドン市内の緊急一時宿泊施設をホームレスの自立支援団体の知人と訪れた。

 本人は不在だったが施設管理の職員が「当然のことをしたんだと本人は言ってました」と話した。アダンさんは英紙の取材には「人生をあきらめる必要なんて少しもないんだ」と答えている。

 帰り道、テムズ川の水際に降りてみた。風が吹くと、水に浸した手がしびれるような冷たさを感じた。(松井学)

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